中途障がいを持つ方たちとの出会いが、事業所の原点にある
理学療法士として病院・在宅医療の現場に10年以上立ち続けた尾森亮太氏は、退院後の患者が「次は働きたい」と口にするたびに、その言葉を受け止める場所が社会にないという現実を見てきた。中途障がい、特に脳血管疾患罹患後の方が就労を目指す際の難しさは、医療職として何度も目の当たりにした課題だ。その経験を原動力に、2022年8月、横浜市中区に就労継続支援B型事業所チャレンジラボを開所した。
需要の拡大とともに関内・吉野町・蒔田へと拠点を広げ、現在は4店舗での協同運営体制となっている。利用者の平均年齢は40歳前後、男女比は6:4、いずれは就職を目指して前向きに通所している方が中心だという。
全国平均の2倍超を視野に入れる、工賃の仕組みを読み解く
チャレンジラボの工賃水準が高い背景には、清掃業務を「福祉的な作業」ではなく「外部の依頼に応えるプロの仕事」として位置づける設計がある。不動産・内装・廃品回収の協力会社からの直接依頼を受け、エアコンクリーニング・ハウスクリーニング・空室清掃など専門性の高い案件をこなしている。代表が自ら清掃技術を習得し指導にあたることで、サービス品質と安定受注を両立させてきた。
全国平均工賃を大きく上回る月5〜7万円が基準となり、月の3/4程度現場に出られる方では月10万円を超えるケースもある。「やっただけ返ってくる」という実感が意欲の維持につながっているという声は、この仕組みの核心を突いている。
体調・得意・生活リズムを起点に組み立てる、個別の作業設計
「短時間だけ働きたい」「体調によって作業量を変えたい」「安心して相談できる環境がほしい」——そうした個別の要望に対応するため、チャレンジラボは画一的な作業カリキュラムを設けていない。外部の清掃作業のほか、内部では組み立て・梱包・シール貼り、Webコンテンツ制作、イラスト作成、ダイレクトメール代行など多様な選択肢が並ぶ。各店舗がそれぞれの特色ある作業ラインナップを持ち、利用者が自分に合った拠点を選べる体制になっている。
デザインが得意な利用者が名刺や看板を手がけたり、イラストを描ける方が事業所のロゴを制作したりと、「個性が仕事になった」という事例が積み上がっている。正直、ここまで幅広い作業の選択肢を用意している就労継続支援B型事業所はそう多くないと思う。
利用料の壁をなくし、入り口の手続きを一括でサポート
現在の利用者の9割以上が実質ゼロ負担で通所しており、費用面でのハードルはほぼ取り除かれている。受給者証の発行から各関係機関への手続き対応まで、スタッフが伴走する体制が整っており、初めての方が「何もわからない状態」から始めても行き詰まりにくい構造だ。理学療法士・介護福祉士・公認心理師・精神保健福祉士が在籍するスタッフ陣が、生活面・精神面・身体面それぞれの相談に応じる。
地域包括支援センターやケアプラザとの連携も整備されており、医療・福祉機関からの紹介でつながるルートも機能している。また、事業所内での経験を評価した自社雇用という橋渡しのルートも設けられており、就労継続支援B型から一般就労へのステップが、チャレンジラボの内部でも用意されている。

